1. 概要
Paymasterとは?
Paymasterは、ブロックチェーン上のトランザクションにおけるガス代の支払い方法を再定義する仕組みです。従来のシステムでは、ユーザーが直接ガス代を支払う必要がありましたが、Paymasterの導入により、第三者がガス代を肩代わりしたり、別のトークンで支払ったりすることが可能になります。これにより、ユーザーエクスペリエンスの向上や新しいビジネスモデルの創出が期待されています。
Paymasterは、特にアカウント抽象化(Account Abstraction)の文脈で重要な役割を果たしており、ブロックチェーンの利用をより柔軟かつ使いやすいものにすることを目指しています。
2. 技術的な仕組み
Paymasterは、スマートコントラクトとしてブロックチェーン上に配置され、以下のような仕組みで動作します。
ユーザーがトランザクションを発行
ユーザーがトランザクションを発行すると、そのトランザクションデータは一旦Paymasterに送信されます。この段階では、ユーザーはガス代を支払う必要がありません。トランザクションデータには、送信元、送信先、送信額などが含まれています。
Paymasterがトランザクションを検証
Paymasterは受け取ったトランザクションを検証します。検証プロセスには以下のステップがあります:
ユーザー認証: トランザクションが正当なユーザーから発行されたものであるかを確認します。例えば、ユーザーの署名が正しいかどうかをチェックします。
トランザクション内容の確認: トランザクションの内容が適切であり、悪意のあるものでないことを確認します。これには、送信先アドレスや送信額、その他の条件が含まれます。
手数料の処理とトランザクションの実行
ここで、3つのケースが考えられます:
a) Paymasterがガス代を全額負担するケース
検証が完了し、すべての条件が満たされると、Paymasterは必要なトランザクション手数料を全額負担します。ユーザーは手数料を一切支払うことなく、トランザクションを実行できます。
b) ユーザーが別のトークンでガス代を支払うケース
Paymasterは、ユーザーが指定した別のトークンでガス代相当額を受け取ります。Paymasterは受け取ったトークンを内部で管理し、実際のガス代をブロックチェーンのネイティブトークンで支払います。このプロセスは、ユーザーにとって透過的に行われ、ユーザーは指定したトークンだけを意識すればよくなります。
c) ガス代の一部をユーザーが負担するケース
Paymasterの設定によっては、ガス代の一部をユーザーが負担し、残りをPaymasterが負担するハイブリッドな方式も可能です。この場合、ユーザーは指定された額や割合のガス代を支払い、残りをPaymasterがカバーします。
ユーザー側の利点
ガス代の選択肢が増える
Paymasterを利用することで、ユーザーはガス代をどのトークンで支払うか選択できるようになります。例えば、ネイティブトークンの代わりに他のERC20トークンやステーブルコインを使ってガス代を支払うことが可能です。これにより、ユーザーは自身の保有するトークンに応じて最適な支払い方法を選べるため、利便性が向上します。
無料トランザクションの提供
Paymasterがガス代を全額負担する場合、ユーザーは一切の手数料を支払うことなくトランザクションを実行できます。特に、特定のキャンペーン期間中など、事業者がスポンサーとなる場合、ユーザーは無料でトランザクションを利用できるため、利用のハードルが大幅に下がります。
事業者側の利点
トークンの流動性向上
Paymasterを通じて、事業者が発行するトークンをガス代として受け取ることができるため、そのトークンの使用機会が増え、流動性が向上します。ユーザーがトランザクションを行うたびに、事業者のトークンが消費されることで、トークンの需要が高まり、市場での取引が活発化します。
マーケティングおよびユーザー獲得戦略の強化
Paymasterを活用することで、無料トランザクションを提供するキャンペーンやプロモーションを実施することが可能になります。これにより、新規ユーザーの獲得や既存ユーザーのリテンションを効果的に行うことができます。特に、ブロックチェーンの初めての利用者に対して無料トランザクションを提供することで、サービスの体験を促進し、継続的な利用を促すことができます。
NERO Chainは、アカウント抽象化とPaymasterを活用するブロックチェーンプロジェクトです。ユーザーはSNSアカウントでウォレットにログインでき、ガス代を柔軟に選択することができます。例えば、ユーザーは各チェーンのネイティブトークンだけでなく、他のトークンやステーブルコインでガス代を支払うことが可能です。これにより、ユーザーエクスペリエンスが向上し、事業者は自社のトークンをガス代として受け取ることで、トークンの流動性を高めることができます。また、事業者がガス代を負担する場合、ユーザーは無料でトランザクションを実行できるため、利用のハードルが大幅に下がります。